昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

116 唐津

 伊賀・信楽や、美濃・瀬戸での粘土探しは良い粘土を見つけると、層になって続いているので、5万分の1地形図で等高線を辿っていくと、同じ粘土が掘り易いので、別の場所でも見付けられる。

 しかし唐津ではこの常識が当てはまらない。
 基本は岸岳系は鉄分少なく、ざっくりしている。
 武雄系は鉄分多く、細かいのだが、共にここを掘って10メートル先を掘ると、もう違う粘土になっている。
 つまり粘土が層に成っておらず、ぽこっぽこっという感じでいろんな粘土が少量づつある、不思議な地域。

 しかし、この粘土の特徴を見事に生かしているのが昔ながらの唐津。
 荒い土・細かい土、鉄分多い・少ない、砂気多い・少ない、粘り強い・弱い等、個性の違う土たちを、早焚きの為、窯に温度差があることを利用して、上手く使い分けている。
 その上釉薬も、溶ける温度の違う長石釉・土灰釉・藁灰釉・黒釉を用意して、窯の中全てを巧みに使い分け、焼き上げている。
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 土が素朴な為、釉薬も、長石釉は長石8・土灰2、土灰釉は長石1・土灰1、藁灰釉は藁灰1・土灰1・長石1、黒釉は鬼板2・土灰1・長石1とどれもがシンプルな調合。
 地元で採れる対州長石や鬼板を使い、松・楢・クヌギ・樫等を燃やして土灰を作り、藁・萱・笹等を燃やして藁灰も作り、各々が自分流の釉薬を作っている。

 原料屋である私の眼から見ると、適当に焼いて、適当に精製して、適当に調合しているので心配にもなるが、どうやらこの大雑把さが、かえって良いようでもある。
 昔はこんなやり方であったのであろう、どこの産地も・・・。

 窯焚きは1日半の早焚きの為、季節を問わず、今でもあちこちで黒い煙が上がっており、私もいろんな窯をのぞかせて頂いたが、どこも気負わず焚いているのが印象的であった。

 この究極が、小鹿田焼。村の皆で協力し合い、粘土を採り、今でも川の水を利用した水車で、土や石を砕き、女が土と釉薬を作り、男が作陶・窯づめ・窯焚きをして、子供を含め家族皆でやきもの作りを生活の一部にしており、私にとっての理想郷である。
 
 本当に心落ち着く産地(大分県日田市)なので、是非一度はここを訪れて見て下さい。 
 
 まるで日本昔話の世界ですよ。
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by ogawagama | 2012-03-08 22:28 | 116 唐津