昔は窯場の職人のことを「窯ぐれ」と言った。全国の窯場を渡り歩き、今、尚、陶工、原料屋として、昔ながらの窯場の知識、技術を唯一引き継ぐ小川哲央の随筆をお楽しみ下さい。 (2012年3月改訂しました)


by ogawagama

139 器の背中

 陶芸家には変な癖がある。外食時、つい食べ終えた器をひっくり返して見てしまう。
 茶席にも高台拝見というものがありますが。

 器を見る時は、まずは手に取り、その感触を味わって貰いたい。
 触れる芸術って意外に少ないものですよ。器は触ってこそ分かるものです。遠慮せずルールを守って、しっかり手にとって撫でて下さい。

 その際、特に裏をじっくり見て貰いたいものです。

 人の背中に語るものがあるように、器の背中、つまり裏にこそ本当の表情が隠されています。
 特に削り具合には、作り手の思いが一番込められているものです。じっくり見て頂ければ、いろんなことが見えてきましょう。
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 かつて器を作る際は、誰もが土作りをしなければならなかった。石を砕き、植物を燃やし釉薬を作らなければならなかった。木を伐り出し、薪も作らなければならなかった。窯を築き、寝ずの番をして薪を焚べ続けなければならなかった。これらは全て体を使う仕事でした。
 こうして体を使って作られた器には、必ず力が備わっていました。
 心に響く生命力がありました。

 しかし現代の器作りは、電話一本で全国の原料が手に入り、スイッチ一つのマイコン制御の電気窯で安易に焼かれたものが主流です。
 一見かっこいいのですが、裏を見ていても何も語ってくるものがない。
 最も大切な、生命力が備わっていないのです。
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by ogawagama | 2012-03-09 15:29 | 139 器の背中